獣道を抜け、マウンに辿り着いた。マウンはボツワナ北西部にあるオカバンゴデルタという大湿地帯へ向かう拠点の街。オカバンゴデルタは動物の宝庫。とは言えアフリカ滞在が半年を越える中で動物には飽きるほど出会ったし、見残したものはいなかった。強いて言えば遠目にしか見ることの出来なかったサイと、ライオンのハンティング。
しかしオカバンゴにサイはいないし、ライオンのハンティングなんてそうそう見られるものではない。そんなわけで当初はパスしようと考えていたオカバンゴデルタだが、足を伸ばしてみる気になったのはモコロトリップとウォーキングサファリに惹かれたからだ。
モコロというのは木をくり抜いた船。それに乗って湿原の中へ入り込む。そこでキャンプ生活を楽しみながらウォーキングサファリをするという。タンザニアでサファリカーによるサファリ、ケニアでサイクリングサファリ、ボツワナでクルージングサファリ、んでもってここまでの道中は自転車によるリアルサファリを堪能した。残すところはウォーキングサファリくらいのもんだろう。ここまで来たら全部試してやろうと思った。
オカバンゴに行くもう1つの大きな理由は、ジャンゴと再び会えたから。リビングストンで出会い、カサネでも会い、プラネットバオバブでも会い、マウンでも会えた。気の合う仲間と行けるタイミングを逃すわけにはいかない。
マウンのオールドブリッジという名の宿で2泊3日のツアーを申し込んだ。料金はテントや食料を持参という条件で1人1090プラ(約10900円)。大量の食糧とワインを買い込んだ。
朝にオールドブリッジから発つボートに乗り、途中でモコロに乗り換える。モコロに乗るのはジャンゴと僕とガイドの3人。このメンバーで2泊3日を過ごすことになる。ガイドが船頭となり、キャンプ地を目指した。
モコロに乗っていた時間は1時間ちょい。キャンプ場などはなく、ガイドが目星をつけていた場所にテントを張る。昼飯を作り、リラックスタイム。日中は暑いので日陰でまったりとした時間を過ごし、夕刻にウォーキングサファリへ。これが度肝を抜かれた内容だった。はっきり言って、ウォーキングサファリを舐めていた。
ガイドを先頭に草原を歩きだすジャンゴと僕。ふと気になったことを尋ねる。
僕「ここってライオンいないよね?」
ガイド「ライオンはいるさ。ひょうだって象だってバッファローだっている。水辺にはカバとワニね。なんたってオカバンゴは動物の宝庫だから。」
僕「ライオンとかと遭遇したらどうするのさ??」
ガイド「どうしようもない。」
ええ!!!???????
どうしようもないのかよ!
どこからどうみても丸腰のガイドを見て、うすうす気づいていたけどね。なにこの信じられないシチュエーション。大丈夫なのか…?
ケニアでサイクリングサファリをしたときは、ライオンやひょうなどの肉食系の動物はいなかった。大型動物の象もいなかった。危ない動物といえばバッファローくらい。だからサファリカーによるサファリではなく、サイクリングサファリが出来るのだと思っていた。しかし、、、
このウォーキングサファリ、危険とかまったく気にしてないし!!
危ない目にあったことがないのかガイドに聞いてみると、6年間のガイド生活の中で2回ライオンが目の前(1m以内)に来たことがあるという。身振り手振りまじえてそのときのことを詳細に伝えてくるガイド。2回ともドイツ人を連れていたらしく、そのドイツ人が失禁したことを嬉々として語った。
・・・失禁してもおかしくない状況だと思うんですケド。
その他には象に殺されてもおかしくなかった話やバッファローに背中を傷つけられる話とか危険にまつわるエピソードを聞く。それらの動物の習性を教えてもらい、至近距離で遭遇してしまった場合においての振る舞い方を知った。
ウォーキングサファリ、半端ない。いつライオンが出てきてもおかしくないっていうんだから緊張感MAXである。きょろきょろしながら草原を歩いていく。ブッシュに入りこんで行くと、木の上とかにひょうがいるかもしれないから気をつけろ、と。
動物に出会いたくないサファリって斬新。よりどころはガイドの能力のみで、そういう意味では彼は信頼出来そうだった。僕らが到底見えない距離から動物を見つけるし、足跡からどの動物がいつここを通ったかを判別する。鳴き声で何がいるかも把握していた。とはいえ肉食動物に出会う可能性はある。神頼みサファリ。
象はいっぱい見たんだけど、全然近づけないのよね。サファリカーに乗っているときは至近距離まで行けたけれど、歩きだと相当離れた位置でも警戒される。象がこちらを見て怒りを表してくる。お互いを隔てるものがないと、こうも違うのか。
そうして初日のサファリを終え、動物に襲われないことを願いながらテントで眠った。翌日はモコロでキャンプ地を移動し、再びウォーキングサファリ。相変わらず気は抜けない。ただ、この日は夜がすごかった。
夕飯を食べ終え、焚火を囲んでまったりトークをしていた。するとジャバジャバという音が近づいてきた。どうやら象が水の中を歩いているよう。それがだんだんと近づいてきていた。それも数頭。
真剣な顔をして耳で様子を探るガイド。くわっと目を見開いたかと思うと、食器などの出ているものを全部片付けて、テントへ潜り込むようにとの指示。急げ!
テントに入り込んでジッパーを閉める。何頭もの象が水の中を歩く音が聞こえる。やばいのか?まじで危険なのか??横たわったまま神経の大半を耳に集中させ、気配を探った。その夜はずっと象の気配を感じたまま、寝入ったのだった。
朝方にも象は近くにおり、しばらくはテントで待機。ガイドがいいよっていうまではテントから出られなかった。その日の朝もウォーキングサファリを楽しみ、昼にモコロでマウンの街へ帰った。
ウォーキングサファリを舐めていた。これを体験すると、サファリカーによるサファリは動物観賞だったように思えてしまう。サファリパークだったんじゃないかって。真に野生を感じたし、動物の世界にお邪魔させてもらった感覚。人間だって動物の一種だと肌感覚で知った。痺れる体験であった。
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