本を読み漁るのが好きだ。読んだ本のリストを眺めていて気付いたのは、「この本は面白かった!」いう印象は残っていても内容があまり思い出せない本と、内容も頭に残っている本があること。
内容が頭に残っているということは、心に刻まれたということだろう。2011年~2012年に読んだ250冊くらいの中で、心に刻まれた22冊を選んでみた。
ぼくはお金を使わずに生きることにした
ぼくはお金を使わずに生きることにした
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 17,556
1年間お金を使わずに生きてみたときの話。お金をまったく使えないことと、お金を少しでも使えること、は似て非なるものである。お金をまったく使えない状況での話から、お金の価値が見えてくる。
現代人の生活は間違っている、という著者の問題提起は真摯に受け止める必要があるだろう。彼はお金が生活に占める割合を減らすことで、世界観がかわるという。僕もそれには賛成だ。
極端なライフスタイルの提示である本書から得られる知見は多い。
プラハの春
プラハの春
ハンガリーで出会った本。チェコにこれからチェコに行くので読み始めてたら、止まらないほど面白かった。1968年のチェコスロバキアを舞台にしたこの小説は当時の日本大使館に勤める外交官によって描かれたラブロマンス。事件の背景がしっかり書き込まれているので、読み応えはばっちりである。
僕は歴史的な背景が描かれている部分は勉強になるので楽しかったが、人によっては億劫かもしれない。下巻に入ると物語が佳境に入っていくので、そこまで読み進めてもらえれば、満足感を持って読み終えてもらえるはず!
グロテスク
グロテスク
売春婦をやっており殺害された東京電力社員の事件がもとだと思われる。どんどん先が読みたくなり、1人称で語られるのは「告白」に近い手法。ってこっちが先だけど。誰もが自分の都合良く話す中、どれが真実なのかを想像することが面白い。
主人公のゆがみっぷりが半端なく、それが物語を面白くしている。事件をこのような形で小説にした著者に感動。最後まで目が離せない。
告白
告白
双葉社
売り上げランキング: 2,277
売り上げランキング: 15,278
湊かなえのデビュー作。語り手が変わっていき、全貌が明らかにされてゆく。ラストが安易なハッピーエンドではないのが個人的には良かった。映画も原作に劣らず面白い。
地雷を踏んだらサヨウナラ
地雷を踏んだらサヨウナラ
講談社
売り上げランキング: 35,040
カメラを志す青年がカンボジアのアンコールワットを撮りに行く。時期はベトナム戦争時。本人が亡くなったのちの手紙と日記が主な内容で、赤裸々な本人の想いや考えが表現されている。
求めています。だけど、まだ得る事は出来ません。叩いています。だけど、まだ開きません。僕は求める事が出来ます。叩く事が出来ます。だけど、ここの多くの若者は求める事も叩く事も出来ません。
オーデュボンの祈り
オーデュボンの祈り
ミステリーのジャンルに入るのにちょいと驚いた。最後に全てが繋がってゆく感じが気持ち良い。不思議な世界なのに、そこに違和感を持つことはなかった。爽快。
ワイルド・ソウル
ワイルド・ソウル
ワイルドソウルの舞台はブラジルのアマゾン。取り扱っている題材は日本からブラジルのどの南米の国々への移民政策である。
話は1961年から始まる。当時の日本政府が発行した「移住者募集要項」によれば、アマゾン各地に散らばる入植予定地は農業用地としての開墾がすでに終わっており、灌漑用水や入植者用の家も完備されている、と謳われていた。しかも入植する家族には、それぞれ二十町歩もの土地が無償で配分されるという話だった。しかし、それは偽りだった。
過酷な環境に放り出された実態から、移民した人の間で移民計画のことを「棄民」と揶揄する声がでた。国に棄てられた人々。彼らのうち数名が、日本という国へ復讐するという展開で話がすすむ。最後まで目が離せない!
・[本・アウトドア]小説ワイルドソウルを見て思い出したアマゾン旅行
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 949
人口構成、というほぼ確定している事実と照らし合わせて経済を見た本。絶対数から目をそらしてはいけない。必読。
上海の西、デリーの東
上海の西、デリーの東
旅行記の中では大分好みの部類に入る。旅をしていた身としては、自分の心を拾い出すような文章を見ると、自分もこういう文を綴りたいと思う。
空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか
空へ―エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか
文藝春秋
売り上げランキング: 120,170
エベレスト登頂にあたり、営利目的でつくられた営業遠征隊が増えてきていたのが1996年当時である。その中でもっとも実績と信用があったロブ・ホール隊に、著者はアウトサイドから営業遠征隊のルポを書くために参加した。そして悲劇が起こったのだ。
著者はエベレストを登頂し、無事に下山した。だが、1996年の春のシーズンのエベレストでは彼の隊の隊長であるロブ・ホールを含め12名が亡くなった。そこには日本人女性で2人目のエベレスト登頂者であり、七大陸最高峰登頂者となった難波康子さんも含まれている。そのときエベレストで何が起こっていたのか、を著者が帰国後にインタビューを繰り返して纏めたのが本書。壮絶な内容に慄然とする。
・[本]「空へ ~エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか~」が類稀なる面白さ!
部族虐殺―夜明けの新聞の匂い
部族虐殺―夜明けの新聞の匂い
新潮社
売り上げランキング: 765,943
世界を巡った身として、著者の貧困の国を回った経験とそこからの鋭い洞察には感嘆する。なんとなく感じていたことが的確な言葉で表現されている。彼女の考え方や文体が好みに合う。
生きるために人はなんでもやることを、私は知らされて来た。それを私は責めることもできない。ドロボーもかっぱらいも嘘つきも売春も詐欺も無気力も自堕落も利己主義も階級差別も、すべては貧しい社会を生きぬくための、共通の風景である。そして地球上にはまだ日本のような豊かな夢の国はごく例外なのである。
狩猟サバイバル
狩猟サバイバル
生きるってなんだろう。僕自身は、自転車や登山やカヌーなどの人力で移動するスタイルでアウトドアをすることで、なんとなく生を実感してきた。むしろ、少しでも生を実感したからこそアウトドアにのめりこんだ。
自転車で世界を巡り、次に山登りで世界を巡りたくなった。体験したい世界はよりシビアな場所であり、死があり得るからこそ生を実感するという不毛な欲望。しかしそれを避けて幸せになるすべを、代わりとなる夢を見つけていない。ならば向かうしかないだろう。
ただ、違う方向性として、農耕、畜産、狩猟などを通じて世界とつながりたいという想いがある。それが山登りにとって代わるという話ではなく、同時に進行させうるもの。今はそういう認識であり、そんな中で手にとった本。
評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている
評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 15,031
時代の節目にいると感じてきた。その変化をわかりやすく伝えてくれる。1つの解釈として非常に面白い。
高度情報化社会とは、情報の数が増えることではない。一つの情報に対する“解釈が無限に流通する”社会である。
チベット旅行記
チベット旅行記
白水社
売り上げランキング: 83,310
白水社
売り上げランキング: 240,629
日本人で初めてのチベット入国者として1897年(明治30年)にチベットへ旅立った河口慧海の旅行記。
チベットを旅行したら死ぬぞ、といわれての河口慧海の一言。 「死ねばそれまでのこと。日本にいたところで死なぬという保証はできない。向こうへ行っても必ず死ぬとは決まっていない。運に任せてできうるかぎりのよい方法を尽くして、事の成就を図るまでのこと。」
死をかけてのことじゃなくても、全てにおいて言えると思う。できうるかぎりのよい方法を尽くすことが大事。
東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン
東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン
新潮社
売り上げランキング: 51,228
旅の最中に出会い、数年ぶりに再読した。涙はまた、止まらなかった。素晴らしい本は、いつになっても素晴らしい。
天地明察
天地明察
江戸時代に日本独自の太陰暦を作り上げるという計画がたちあがった。その意味、そして影響は途方もなく大きく、前代未聞のベンチャー事業といえる。ロマンある話。
「有名人になる」ということ
「有名人になる」ということ
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 6,204
勝間和代ははじめから有名人になることを狙っていた。そのメリットやデメリットが素直に書かれた言葉がイイ。
インターネットが世の中に登場し、ある種誰でも有名になりうる時代がやってきた。一般人と有名人の境目があいまいになりつつある。誰しもが有名になってしまう可能性があるからこそ、その意味について知っておく必要がある。
模倣犯
模倣犯
宮部みゆきの長編。この分量の文章を飽きずに読ませることに感動する。細かく描かれていて僕は満足だが、文章量が多いのが苦手な人には向いていないだろう。面白いよ!
大前研一 敗戦記
大前研一 敗戦記
大前研一の都知事戦と参院選の敗戦記。彼のような世界でも有数の方がなぜ落選したのか?それを彼自身がどう解釈しているのか?その疑問に答えてくれている。
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
技術評論社
売り上げランキング: 4,875
友人に勧められた「ニートの歩き方」。友は僕に何を伝えようというのだろうか。ニートを目指せってこと??すでにニートなんですケド……
家の近くの本屋では見つからなかったこの本は、東京の書店ではすぐに見つかった。手にとってみるとさくさくと読み進めてしまい、気がつけば読了。著者のphaさんのことはネット上で知っていたので、彼の世界をすんなり受けいれることができた。ニートを推奨するわけではないけれど、ニートが受け入れられる社会のが優しいよね、という点においては激しく同意。生き方の多様性こそ、日本にかけていると世界と旅して感じたからだ。
日本社会でばりばりと働いて馴染んでいる人はこの本を手に取らないだろうけど、そういう人にこそ読んでほしい一冊。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
早川書房
売り上げランキング: 738
本の内容はハーバード大学のJustice(正義)という授業の内容をまとめたもの。正しい行ないについて、哲学者らの意見をふまえながらを考察してゆく。以下のような問いに対してさまざまな角度からアプローチするのだ。
・1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたは1人を殺すべきか?
・前の世代が犯した過ちについて、私たちは償いの義務があるのだろうか?
・金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再配分するのは公正なことだろうか?
哲学者たちが導きだした解は、ときに極論と感じ、ときに正論と感じる。僕にとっての極論は、あなたにとっては正論かもしれないし、その逆もありえるだろう。感性を説明することは難しいことだけど、古今の偉大なる哲学者たちがそれを言葉であらわしており、思考を手助けしてくれる。
今の時代において(どの時代もかもしれないが)、自分なりの哲学を持つことは大切だと思う。己に対する行動指針があることで、瞬間瞬間にもとめられている選択肢をスムーズに選べる。その指針をかたちづくるのに一役買ってくれる本である。
考えることが好きな人には、ぜひ手にとってもらいたい一冊。
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
幻冬舎
売り上げランキング: 1,407
無農薬のリンゴを作りだした木村さん。そこにあった想いと信念に、心が揺さぶられる。彼のリンゴを食べてみたい。
2018年に読んだおすすめ本
一人で人生戦略会議をやっており、そのために読んだおすすめ本をまとめた。
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