国に棄てられた人々がいた……
ワイルドソウルの舞台はブラジルのアマゾン。取り扱っている題材は日本からブラジルのどの南米の国々への移民政策である。
話は1961年から始まる。当時の日本政府が発行した「移住者募集要項」によれば、アマゾン各地に散らばる入植予定地は農業用地としての開墾がすでに終わっており、灌漑用水や入植者用の家も完備されている、と謳われていた。しかも入植する家族には、それぞれ二十町歩もの土地が無償で配分されるという話だった。しかし、それは偽りだった。
過酷な環境に放り出された実態から、移民した人の間で移民計画のことを「棄民」と揶揄する声がでた。国に棄てられた人々。彼らのうち数名が、日本という国へ復讐するという展開で話がすすむ。
本書の一部を引用しよう。
入植者たちは次々と逃げ出し、残った者たちもアメーバ赤痢やマラリアに冒され、パスポートを取り上げられ、奴隷同然の境遇で赤貧に苦しみながら死んでいった。
むろん山本の両親もそうだ……。
圧倒的な大自然の前では、ヒト一人の存在など明らかに軽いものだと思い知らされる。涙さえも出ない。(上巻p225)
最後に、外務省領事移住部のある役人のコメントが紹介された。
「どんな世界にも、成功した人と失敗した人間がいるでしょう。失敗した人の側面ばかりを取り上げて、それで国の責任云々と言われるのも、どうかと思いますがねぇ。」
久々に腸が煮えくり返った。
その腑抜けたコメントーーー怒りが全身に震えた。(上巻p365)
四十年もかけて、おれはようやくブラジル人になった。やっと過去から解き放たれた。
おまえたちの言うとおりだ。復讐に燃え、憎しみを憎しみで塗りつぶした挙句、その先に広がっていたのは、たった一人の世界だ。敵も味方もない。人種もない。血の色もない。肌の色もない。一個の存在としてただ呼吸をし、命だけが無限に広がってゆく世界だ。
ようやくその真実に辿り着いた。(下巻p392)
一気に読了した。思い出したのは、ブラジルへ行ったときのこと。2006年10月、僕はブラジルのマナウスにいた。初めてのバックパック旅行で憧れの地アマゾンを求めたのだ。
ピラニアを釣って食べる。ワニを狩って逃がす。落ちているマンゴーを拾って食べる。ヒョウが出る道をトレッキングする。といったアクティビティを満喫した。それは全てガイド同伴だった。1人で遊べるほど安全な場所ではなかった。
アマゾンは生半可な場所ではない。ジャングルの中へふらっと行ってちょちょいと遊ぶ、なんてことは出来ない。現地の人でも自分がよく知る場所以外には足を踏み込まないのに、よそ者がそれを行うのは愚かだろう。
そのときのガイドが日系ブラジル人の方だった。いろいろと気を回してくれ、非常に充実した時間を提供してくれた。その方から移民のリアルな話を聞いたのが、関心を覚えたきっかけである。
彼は50歳くらいだった。日本語はぺらぺらだったけど、それは努力によるものらしい。日本には数回行ったことがあり、自分のルーツである日本が見たかった、と。もっと日本を見てみたいけど、日本に行くことが経済的に難しいのを言外ににおわせていた。マナウスで放映されているNHKの番組を見ることは欠かさないということが、日本への想いをあらわしているように感じた。
僕が訪れたときは乾季だった。アマゾンはもう一度行ってみたい数少ない場所で、次は雨季のアマゾンを見てみたい。「また来ます」と伝えお別れした、お世話になったガイドさん。今でもすぐに顔を思い出せる。元気にされているだろうか。
当時のブラジルアマゾンツアー旅の写真
マナウスの街からアマゾン河を望む。
6年前の僕。
リオネグロ川とアグアスソリモンエス川の合流地点。流速と水質の違いにより、混ざらない。完全に混ざるのは10kmほど下流になる。
現地の人の家。
ジャングルトレッキング。
変わったセミ。バッタみたい。
タランチュラみっけ。
もう一匹みっけ。
黄金の毛虫。
アリがでかい。かまれると寝れないくらい痛い。仲間うちで問題を起こしたインディアンは、このアリの巣の上で縛られて一晩過ごす。
ワニ狩り。ボートから身を乗り出して素手で捕まえるもんだから、びっくりした!!
エコツアーなので逃がす。
ワニの子供はこんな感じ。
ピラニアは100匹以上釣った。ピラニアが入れ食いの湖に釣れていってもらい、ボートから小便をしていてかけられた言葉。「万が一落ちたら10分で骨だけになるから気をつけてね」
ナマズも。釣ったのは僕。リリースは危ないのでやってもらっている。
実は60cm~80cm。網が相当おおきいのよ。
釣ったピラニアはもちろん食べる。刺身、フライ、スープ、塩焼き。
アマゾン河に落ちる夕日。
ワニみたいなセミの抜け殻。
ピラニアがいないところなら泳げるよ。
茶褐色。
全裸で壁に向かっている人がいるよ。ウォーリーを探せ的な。分かるかな?
アマゾンの猿。
ゴムの木。
ゴムを作る様子。
こ、これは、、、
美しい色をしたオウムがいたよ。この地に次に戻ってくるのはいつになるだろうか。
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