[チベット旅行]7.風邪+高山病+峠+悪夢

漠然と考えていた計画があった。康定からラサまでは1850km。ビザ取得に1日。毎日80kmで進んで23日。ラサ~ネパールまでがツアー探しと移動で6日。これをベースに動いていけばネパールまで行けそうだ。

標高約4300mの峠から約3600mの新都橋まで下り終えたときの時刻は17時前であった。ラサへはまだまだ距離があり時間は限られている。今日はまだ58kmしか来ていなかったので、腹ごしらえをしてもう一漕ぎしたかった。実際に町まで下りてくると俄かに身体に寒気とだるさを感じ、その場で立ち止まって思案した。このまま走ってキャンプしたら確実に身体を壊すと思い、宿を取ることにする。

宿を決めた途端にさらに具合が悪くなる按配で、おそらくは緊張が解けた安心感から症状が出たのだろう。荷物と自転車を部屋に運び入れると、着替えたいのも山々なのにベッドの上で横になって動けない。懸命に体を動かして、ご飯を食べに行き、薬を飲み、シャワーを浴び、すぐに横になったらあっという間に意識が遠くなった。

寒気で目が覚め、寝袋等を出し防寒着を余すことなく着込んだが、どうにも寒い。身体の芯から猛烈な不快感が来る。結局は食べたものも全て戻し、がたがた震えながら夜明けを待った。その間ラサ行きはどうなるのだろうということが頭の中をぐるぐると回っており、精神的にも良くなかった。

翌朝になると多少は具合が良くなっており、食欲はなかったもののご飯を食べに行く。なんせお腹はからっぽなのだ。宿の目の前の食堂で麺を食べると、口に物を入れたのが良かったらしく、食欲が戻って来た。目の前の宿から見覚えのある人が来るなあ、と思ったら、ビザを一緒に取ったロシア人のヴィタリーだった。町には溢れんばかりの宿があるのに、同じ宿に泊まっていたらしい。フランス人のセルスの姿が見えないので聞いてみると、寝込んでいるとのこと。嗚呼、僕と同じか。

昨日の寒い中のキャンプのせいで風邪をひいたのか、高山病で体調を崩したのかは分からないが、どちらもな気がする。食堂にて3人でどうするかを話し合うと、やはり進まないとラサには到底着かなさそうだということ。昨日よりはやや良くなったといっても依然として調子は悪い。しかしここは薬で誤魔化して進んでみることにした。

新都橋の次の大きな町は雅江で、そこに行くために1つの峠を越える。まずはその峠越えのための上りから始まった。身体に力が入らず、ゆっくりゆっくりと進んでいく。高所のため息が切れて数メートル進むとハァハァと体内に酸素を取り込む。同じような姿勢だからか、その内に膝ではなくて腰が痛くなり、自転車を漕ぐ、自転車を引いて歩く、を繰り返した。意識が朦朧としてよく分からない。

1時間に1度、大休憩を取った。道路脇に自転車を立て掛け、ブルーシートを引いて寝ころぶ。高山病対策として深呼吸を心がけて呼吸していると、ふと気付くと意識が遠のいている。焦って時計を見るが、いつから休み始めたのか定かではない。再び自転車を漕いだり、押したりする。僕は普段薬を飲まないためか、薬が効いているのがよく分かる。2度目の大休憩も同じように意識が遠のき、そして夢を見た。

ユーコン川を共に下った関ちゃんの結婚式の夢だった。2月末に挙げられた式に、僕は勿論参加していない。目が覚めると、なんだか置いてけぼりになったような気分だった。仲間から取り残された間隔。振り返れば、この旅の最中に多くの友人が結婚しており、共の門出に立ち会えていない。このときに妙な心苦しさを覚えた。

兎に角一歩でも一漕ぎでも進み、なんとか峠の頂上まで上がってきて、さあ下ろうかと服を着込んだ。しかし少し下った直後に再び上る道が始まったのだ。さらに遮るもののなくなった高地には、雄叫びをあげるがごとく風が荒れ狂っていた。俯きながら歩いて進む。食欲がないので食べ物を全く食べておらず、水も飲んでいないことに気付き、無理にでも摂取した。3度目の大休憩を取り、2つ目の峠の天辺まで来た。時刻を見ると16時。10時に出発したので6時間上っていたことになる。その距離は27kmで走行時間は4時間半であった。

そこからは下るのみ。ただただ下った。次第に体調も良くなってきて、なんとか雅江まで走ることが出来た。着いたのは暗くなってからの20時。まさかここからイベントがあろうとは思わなんだ。

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チベットの道

[チベット]1.全ては始まった
[チベット]2.まさか再び会えるとは
[チベット]3.何が足りないのかが分かった
[チベット]4.そうは問屋が卸さない
[チベット]5.必要な時間
[チベット]6.チベットとはこんなところだよ
[チベット]7.風邪+高山病+峠+夢
[チベット]8.警察に連れて行かれた
[チベット]9.思い込み
[チベット]10.標高4000mにて絶景の道
[チベット]11.チベット人の家に泊めてもらう
[チベット]12.出発して5分後にチベット人の家に招かれる
[チベット]13.鳥葬を見て死を想う
[チベット]14.勇気ある撤退と旅のパートナー
[チベット]15.チベット人の結婚式に参加
[チベット]16.浴室に泊まる
[チベット]17.チベットの家づくりに参加
[チベット]18.チベットの学校潜入







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管理人のたかです。1984年4月20日生まれ。不動産会社での開発業、自転車世界一周、地域おこし協力隊を経て、愛知県新城市の古民家で宿泊事業をはじめました。SNSでフォローしていただくと最新記事を読むことができます。よろしくお願いします。