日本人は中国にノービザで入ると15日間の滞在が出来る。その期間にベトナムのモンカイから入国して香港まで自転車を漕ごうと思っていた。
中国入国初日も出来る限り進んでおこうと走っていたが、ベトナム終盤からの体調不良は続いており頻繁に休憩を取らなければならなかった。雲が空を覆い薄暗い中、海に近い道の風は冷たく、景色はいまいち。ただ懸命にペダルを回す。
一旦、長時間休もうと道から少し離れたところにブルーシートを敷いて寝ころんだ。どっと疲労を感じ、目を閉じて深呼吸する。ベトナムで会った子が別れるときに栗をくれたことを思い出し、寝ころびながら殻を向いては口に運んでいた。ほくほくした栗の味を噛みしめながら、「事故がなく楽しく旅を続けられるように」と言った女の子の言葉を脳で反芻し、自転車で香港まで行くことを思い直した。優しさが身に染みた。
いざバスや電車などの公共機関を利用しようと決めると、憂鬱なのは自転車があること。利用する際に何かと揉めるし、いろいろ準備をした後にだめと言われたり、予想以上の追加料金がかかったりする可能性もある。なによりもトラブルが起こりそう、というだけでなんだか気持ちが後ろ向きになる。だったらやっぱり自転車で行こうか、などと迷うのだ。けれど走る気持ちが萎えてしまった以上、電車で移動することにした。
まずは防城市から南寧へ。自転車を荷物を付けたそのままの姿で持っていくと、ものすごい嫌な顔をされた。電車に乗る前の荷物検査(飛行機のときと同じ)があり、荷物を全部外してチェックを受ける。言葉が通じないので筆談で「解体」が必要なことを知り、自転車の前後輪を外して電車に乗せた。防城市が小さな駅だったからなのか、係員も途中から好意的になり、全てを手伝ってもらってコトが進んだ。
南寧では電車のチケットを買おうとすると、大行列。どこに並んで良いかも分からないし、香港まで直通で行けるのかも分からないので、一旦は躊躇。食堂で仲良くなった中国人の女の子にいろいろ聞いてみると、一緒に買いに付いて行ってあげようかと言われたので、これ幸いとお言葉に甘えることにした。
一緒に並ぶこと約1時間、チケットの窓口へ。行きたい路線の席が埋まっていたりしてやり取りが発生したので、彼女が来てくれて本当に助かった。
翌日に南寧から広州に移動する際は、荷物のセキュリティチェックのところで自転車の前後輪を外すように言われ、そこから電車に乗り降りするプラットホームまで運べと言われる。6つのバックに自転車を一度で運べるわけもなく、必然的に何度も往復することになる。自転車はタイヤを外すとただの鉄の塊となり、大荷物なのだ。電車に乗せることろまでタイヤ付けたままでよければすごい楽なのに、、、
そのときも彼女が仕事を抜けて見送りに来てくれたので、荷物を見ていてもらったり運ぶのを手伝ってもらったりでなにかと助かった。有難い。
無事に自転車を電車に乗せれば一安心。終えてしまえばなんてことはないのだが、乗るまでは結構憂鬱なのである。自転車旅の数少ない欠点と言えよう。
電車では向かいのおばちゃん筆談で会話していた。文字で会話出来るのは救いである。
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