「高所順応のための停滞日ってなくてもなんとかなる気がするんです。」
「富士山を全ての登山路から登りましたし、走ったこともありますが、高山病になったことは一度もないですよ。」
「キナバル山(4095m)を4人パーティーで登ったとき、他の3人は高山病で苦しんでいましたが、僕は大丈夫でした。」
適当に要約したけれど、上のは相方のナベちゃんの発言。彼は後に「高山病を甘く見てはいなかった」と語るけれど、彼の高所に対する自信は相当のものに感じられた。片や僕は、ペルーのクスコやプーノに行ったとき、ボリビアのウユニ塩湖に行ったときに高山病らしき症状が出たことがあったので、自信がなく慎重だった。高所順応に関しては教科書に倣って進みたかった。
今回登る予定の中で最も高所であるカラパタールの標高が5550m。そこに至るまでのルート上の町であるナムチェ(約3400m)で2泊、ディンボチェ(4400m)で2泊すること、とガイドブックに書いてある。それは高所に順応するために停滞日を設けろという意味。教科書に倣って進みたかった、というのは、書いてある通りに停滞したいということである。ナベちゃんは、自分はたぶん大丈夫だから停滞せずに進んでもいいなあ、というガンガン行こうぜの雰囲気を出していた。それに対して僕はいのちだいじにの方向性だった。そんな空気の中、ナムチェの2日目にホテル・エベレスト・ビューでナオコさんと出会ったのだ。
ナオコさんはパルスオキシメーターという代物を持っていた。それは脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)をモニターする医療機器で、血酸素飽和度の方を計ることによってどの程度高所に順応しているかを客観的に見ることが出来る。この数値はどれだけ体に酸素を取り入れているのかというものなので、体調の全てを表しているわけではなく、参考程度のものである。それでも僕らはかなりわくわくしながら己の血酸素飽和度を計ってみることにした。
ちなみに血酸素飽和度を平地で計ると、正常なら100%。だがここは3440mの高所。ナオコさんによると80%台の後半ならばまずまずといった数値らしい。(参考HPはこちら)。そんな説明を受け、まずはナベちゃんが計った。その結果は、、、血酸素飽和度が86%で心拍数が90前後。ナオコさん曰く「普通ね。」指先に付けたパルスオキシメーターの心拍数の方の数字が上がっていくのと同時にナベちゃんの表情も強張り、あり得ない、、、といった茫然自失の様態がありありと表れていた。まさに
「こ、この俺様が普通だと、、、」
といった感じである。
そして次は僕の番。計ってみるとその結果は、、、94%。ナオコさん曰く「ネパール人並み!」どうやらかなり良い数値を叩き出したらしい。心拍数も61とかなり低めだった。そのとき、ナベちゃんの表情に更なる変化があった。ポカンと口を開けて曇っていった顔からその思いを推測するに
「そんな馬鹿な、、、」
であったに違いない。
そのナベちゃんの様子から、僕はドラゴンボールのべジータを思わずにはいられなかった。パルスオキシメーターという客観的な強さを計るスカウターにあたる道具で、己の強さに対する自信が揺るぎ始めたべジータ。まさかカカロット(この場合は僕)に負けるとは思ってもいなかった。エリート戦士であるこの俺が、、、と。
こんなイベントがあり、それ以降はちょっぴり謙虚になったナベちゃんなのでした。
(べジータの名言)
「では、努力だけでは超えられない壁をみせてやろう」
「喜ぶがいい。貴様のような下級戦士が超エリートに遊んで貰えるんだからな」
「今の内に本気でやっておいた方がいい。後悔することになる・・・」
「ウォーミングアップでおしまいにしてやるぜ」
「へっ きったねえ花火だぜ」
「や、やはりそうか!貴様勝手に人の妻を!自分の妻のをやりゃーいいだろ!チチの乳の写真を!」
(ナムチェ→ディンボチェの写真)
パルスオキシメーター装着時。
山の中腹を歩く。
森林限界を超えるのはまだ先のようだ。
山小屋の食事は300~500ルピー(約360円~600円)とネパールにしては高額だがなかなか充実している。運ぶ手間を考えたら仕方のないこと。自分で運ぶことと比較すればむしろ本当に有難い。
ヤクに雪山が似合う。
日が昇るにつれて頭が照らされていく山。
さあ出発だ!
町は川沿いに多い。ディンボチェもその例に洩れず、影になっている川の近くに位置している。
ディンボチェ2日目はなべちゃんが高山病にてダウンしていたので、僕1人で散歩。
鳥の囀りに目を向けると、優雅に舞う2羽が青い空と白い山の中を自由に駆け回っていた。
暖を取りつつ体を休める一時。
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エベレストベースキャンプ日誌
・[ネパール]エベレスト1:想い
・[ネパール]エベレスト2:エベレストに挑戦する日本人女性に出会う
・[ネパール]エベレスト3:べジータ vs カカロット
・[ネパール]エベレスト4:今年4度目の新年を迎える
・[ネパール]エベレスト5:BCでの再会とカラパタールからの絶景
・[ネパール]エベレスト6:チョラパス(Cho la pass)越えは中級者向けの美しき道
・[ネパール]エベレスト7:もう一方の見どころ、ゴーキョピーク
・[ネパール]エベレスト8:俺達はまだ本気を出していないだけ
たかひろさんはネパール入り以前からチベット、中国の高地をだいぶ走り回ってたから元々高所順応出来てたっていうのもあるでしょうね。
マゾさんはマゾだからそれくらいのほうが燃えていいんじゃないでしょうかw