ブルガリア人のキャベツ投げ渡し芸と美しい放物線[自転車旅]

トルコと比べて気温が上がったような気がする。自転車で走っているうちは涼しいけど、日なたで立ち止まると暑い。休むのは日陰じゃないと。日陰で自転車が立て掛けられる場所はないかと目を配りながら進んでいると、左手の延々と広がる畑で仕事をしている人たちが視界に入った。みんなで何かを投げているけど、一体なんだ?

気になったときにはブレーキに手をかけており、自転車は日なたで止まった。やはり暑い。彼らが投げているものを確認すると、キャベツだった。その光景になぜか目を奪われる。自転車に跨ったまま、しばらく見入ってしまった。そのうちに僕が立ち止まっている場所が陰り、涼しい。

5人いる。3人は父、母、息子だろう。残る2人は手伝いか使用人か。父がトラックの荷台の手前に立っている。そこから5mくらい離れたところに母がいる。さらに3mくらい離れたところに息子がいる。残る2人はそれぞれキャベツを畑から掴み取り、息子に投げる。息子は母に投げ、母は父に投げる。最後の父はトラックにキャベツを積み込む。

失敗しないものなのかと思っていた。だがミスをする気配もなく、リズミカルにキャベツが投げ渡されていく。しばらく見ていて気付いたのは、キャベツが描く放物線が毎回同じだということ。美しい弧を描いて受け渡されていく様は、熟練された芸を見ている気分だった。

5人は的確な配置だった。キャベツをもぐのには時間がかかるので、2人が交互に息子に投げることになっている。息子と母の距離が母と父の距離より近いのは、遠目に12歳程度に見える彼には長い距離を投げることが難しいからだろう。母は長い距離のキャベツ投げを確実に行い、父は詰め込みという最も重要な仕事を担っている。

もっと近くで見たいという要求が起こり、右側車線の路肩から左側車線の路肩に移動した。そして引き続きキャベツ投げ渡し芸を見ていると、5人がこちらに気付いた。なんだか気恥ずかしく、また、少々後ろめたい気分になり、手を振った。向こうも笑顔で手を振り返してくれた後、キャベツをもいでいる男の1人が小走りでこちらに向かってきた。何かまずかったかと思ったら、キャベツを手渡してくれ、「持っていけ」と。まさに産地直送のキャベツを頂いてしまった。

1回の食事では到底食べきれない巨大サイズの新鮮なキャベツは、スーパーで見るものより随分と青々しくて美味しかった。その日がしばらく続くキャベツライフの初日となった。

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管理人のたかです。1984年4月20日生まれ。不動産会社での開発業、自転車世界一周、地域おこし協力隊を経て、愛知県新城市の古民家で宿泊事業をはじめました。SNSでフォローしていただくと最新記事を読むことができます。よろしくお願いします。