ギリシャで17カ国目となる入国審査。僕はそんなに不審だったのかな。髭をもじゃもじゃ伸ばしている男がサングラスをかけて、その頭にはヘルメットが乗っており、荷物満載の自転車に跨ってきたら、確かに怪しく思ってもおかしくはない。ただ、今までも同じように国境を越えてきたけれど、ほとんどの国でスルー同然の扱い方をされていただけに、入国審査に30分もの時間がかかったのは不思議だった。
イミグレーションに着いたときには前方に一台の車が停まっていた。その車の4人はさっさと手続きを終えて入国した。僕もすぐに通過出来るものだと思っていたら、イミグレーションの親父は僕のパスポートの入念に、それはもう偽造されていることが前提であるかのような入念具合で、調べ始めた。顕微鏡のようなものを使ってパスポートをチェックされたのは始めて。すでにパスポートの4分の3は埋まっている出入国スタンプを熱心に1つずつ確認し、その合間に、この後どこへ行くんだ、と2度も聞いてきた。
ブルガリアに抜けるよ、と答えると、再びパスポートに目を落とす。30分くらい経ったところで、この後どこへ行くんだ、と再度質問してきた。だからブルガリアだってば、と答えると、ブルガリアならちょっとの距離だし問題ないかな、といった様子でようやっとGOサインが出た。一体何をそんなに疑われていたのだろう。日本人になりすます密入国者が多いのか。昔、日本のパスポートはその入国出来る国の数と容易さからゴールデンパスポートなんて呼ばれていたらしいけど、あまりに偽造が多いから世界に先駆けてICチップを導入したんじゃなかったのか。なんか意味深な審査時間の長さだった。
係員がブルガリアに抜けるならマア、という感じだったように、トルコとギリシャの国境からブルガリアまでの距離は短い。最短距離を抜けたら50kmもないので、ちょっと寄り道をしたぐらいだ。実際のところトルコからブルガリアに行く際にギリシャを通る必要はなく、両国の国境の少し南を通ったらギリシャを走れるので、せっかくだし顔を出そうかくらいの気持ち。つまりギリシャに来たこと自体が寄り道だった。
入ってみての様子を見ると、トルコから雰囲気ががらっと変わった感じはない。経済危機だぜピンチだぜ、という感じもない。ギリシャ全土から見れば北東の端っこだから、ここをちょっと見たからギリシャを味わったなどと言える場所では到底ないのである。ほんとなんちゃってギリシャ。
一番の違いを感じたのは通貨がユーロだということ。つまり、ここはユーロ圏内。ユーロ圏内というと、真のヨーロッパ(真も嘘もないのだけれど)という感じがして、将来いつか行くサ、と先延ばしにしていたヨーロッパに、遂に足を踏み入れたのだと感慨深かった。
けど、逆に言えばギリシャで特筆すべきことはそれ以外にない。物価はトルコより高く、次のブルガリアはトルコと変わらない価格帯だと聞いていたこともあり、一応トルコで買いだめしてきていた。よってギリシャで買ったものはほとんどない。せっかく来たので日帰りで抜けるのもなと思い、一泊キャンプしたのがギリシャでやったこと。結局、多くの国に足を運ぼうとして一泊二日くらいでその国を通っても、何も分からずお終いだと学んだのだった。やっぱり最低でも一週間、出来れば二週間くらいの滞在がないと、その国の空気に馴染む間もなく過ぎてしまう。せっかく無期限(一応二年予定)で旅をしているのに、これでは勿体ないなと思った。
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