ベトナムを15日ビザで旅をしており、結局目いっぱいの15日間滞在した中では終盤の13日目のことだった。走っていたのは世界遺産のハロン湾から東に向かって中国に抜ける道はなかなかの田舎道であり、途中の一部は道の舗装もされていなかったりと行き届いてない感じがするところ。そこで自転車を12歳くらいの2人乗りした少年に声をかけられた。
「Money, Money, Money, Money,」
「Money, Money, Money, Money,」
その2人組の少年は20分程並走してきて、隣でずっとこちらを見て「Money」と連呼していた。はっきり言って不快だった。途中から露骨に嫌な顔をしたけれど、ずっと付いてきて言い続けていた。
ベトナムで初めてだった。というか東南アジアをカンボジア、タイ、ラオスと2ヵ月半旅をして、こういった声のかけ方をする子供に初めて会った。物乞いがいなかったかと言われるとそういうわけではない。ただ興味を持ってこちらに来ているわけでもなく、物乞いをしなければ生活出来ないというわけでもなく、お金をもらうためにマネーという単語を発し続ける子供。
そして同じ日の数時間後。自転車で山道を走っていた。そこは町という程の場所でもなく、道沿いにぽつぽつ家があるような場所。店すら数キロに一件という様子。そこで10歳に満たないであろう子供が3人家から勢いよく走り出してきた。
「Money!Money!!Money!!!」
という掛声と共に。
こちらの声は前回自転車で並走されたときと違い、すぐに遠くなっていった。しかし云い様のない悲しみが胸を覆い、そちらはすぐに遠ざかることはなかった。
以前にインドに1人旅に行ったときなどこういった子供にいっぱい会った。経済格差がある以上、仕方がないことなのかもしれない。久し振りに見たから、東南アジアでは珍しかったから、悲しくなったのか。きっと当たっているけれど、外れてもいる。
今回彼らに出会ったのは観光地と呼ばれるところではなかった。むしろ観光客などまず来ない場所だろう。なぜこのようなところで外国人を見るとマネーを連呼する子供が育つのか。
そういった子供が出来上がるのにも過程があるはず。例えば、以前に外国人からお金をもらったことがある、またはそういった友達から話を聞いた、親にそうしろと言われた、とか。外国人はお金持ち、という知識があっても、外国人を見るとマネーを連発するにはつながらないと思うのだ。その図式が成り立つとすれば、観光地にいたときにこの類の経験することが避けられないはず。
それまでの2ヵ月半の東南アジア旅でここより観光地化されて外国人が多いところにも行ったけれど、そういった子供と会わなかったのに、なぜこんな辺鄙な場所でそういった子供が育つの?彼らがどういった経緯を経てそのような行動に及ぶようになったのかは分からない。ただ、彼らが悪いわけじゃない。
そう思ってもなんだかやり切れなくて、言葉では云い様のない悲しみに暮れ、俯いて自転車を漕いだ。筋肉が悲鳴を上げるほど力一杯、漕いだ。
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