目で追える範囲の速さで 景色が駆け抜けていく。路面も、草も、羊も、雲も、躍動感を持っていた。スピードに乗って自転車で走るということ自体がこんなにも気持ち良いことだったいうことを思い出す。ペダルに力を加え続けると、身体が内側から熱を持つ。その火照った身体が風を切り裂いて、汗でやや湿ったTシャツが身体の熱を奪っていく。心地よい。自転車に乗るという行為が単純に楽しいと感じた。
チリのプンタナタレスからアルゼンチンのエルカラファテ向かう道の一部は西から東に向かっている。パタゴニアの風は基本的に西から東に吹いており、ウシュアイアから北上してきて以来、一日を通じて追い風になったのは初めてだった。風と共に在り、風が背中を押してくれた。
実際、漕がなくても進むレベルである。サドルに跨って、地から足を離せば、風が僕を運んでくれた。後ろからそっと押し続けてくれるような感覚で、すーと自転車が動き出す。ある区間なんかは30分程度の時間、全くペダルを回していないんじゃないだろうか。通常、ある程度の追い風のときは、自転車を漕いでいると風を感じなくなる。無風時に自転車が切る風がなくなっているということだろう。しかし今回はスピードが出ているにも関わらず、尚も後方から風を感じていた。これがパタゴニアの追い風か。信じられない。
が、途中からはオフロードになり、なまじスピードが出ているだけに揺れる揺れる。ハンドルを両手で押さえつけていても、右に左に行ったり来たり。上半身全体が力みながらの走行となった。それでも明日この追い風があるか分からないという思いから、漕げるだけ漕ごうとがんばる。一日を終えてみれば、ものすごい疲労感とハンドルを押さえるつけていた手の皮が剥けていた。
いろとりどりの花が道の両側に咲き美しい。
夕陽。
天気は上々であった。
このような路面を走っていた。ガタガタ揺れる自転車を抑えて走る。
夕暮れ時のテント。紫色の空が360°覆う。
イカの炊き込みご飯。こっちの米の炊き加減が少しずつ分かってきた。
奥に見えるのは氷河なのである。
あまりの強風にテントのポール(支柱)が折れた。
カラファテの宿で久々の肉とビール!
3月6日 アルゼンチン エルカラファテより
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