若者政策を推進したい会代表の古民家宿管理人タカ(@viatortaka)です。
日本では若者の割合が年々減り続けている。それは一人一票という民主主義において若者の政治への影響力の低下を意味しており、そのために国が動き出した。
具体的には2018年3月20日に超党派で構成される「若者政策推進議連(仮称)」発足に向けて、与野党の国会議員と主要若者団体を集めた事前打合せが開催された。
若者政策といえば愛知県新城市の若者議会。これが非常に良い取り組みなので、当記事では若者議会を詳しく紹介したい。
若者の政治参加の状況
日本若者協議会による「若者の政治参加の状況」というグラフを見てみよう。
(画像記事:若者政策推進議連発足へ)
20代と60代では投票者数に3倍もの差がある。また、若手の政治家の数も圧倒的に少ない。
(画像記事:若者政策推進議連発足へ)
画像を引用した記事ではこう書いてある。
どうすれば若い世代の意見を政治に反映てきるのか?
この問いに正面から向き合い、取り組んでいるのが愛知県新城市の若者議会である。
愛知県新城市若者議会の概要
新城市は愛知県の東側、静岡県浜松市の隣に位置する。そこで2015年4月に若者議会が発足した。
若者議会は「新城市若者条例・新城市若者議会条例」に基づいて設置されている。
若者が活躍できるまちにするため、若者を取り巻くさまざまな問題を考え、話し合うとともに、若者の力を活かすまちづくり政策を検討している。
特徴的なのは1,000万円の予算提案権を持っていることで、政策を立案し、市長に答申し、市議会の承認を得て、市の事業として実施されている。この一連のサイクルが2015年から毎年繰り返されてきた。
若者委員(以下委員)は20名で構成されており、条件は新城市内で在住・在学・在勤であること、概ね16歳~29歳であること。任期は1年で、全体会と呼ばれる全員が集まる会議が月に2回ほど平日19時~21時に開催され、それに加えてチーム毎の分科会と呼ばれる会議が適宜おこなわれる。
2016年の第二期から市外委員が5名募集されており、市外の若者の声を取り入れるようになった。
スケジュールは第一期から第三期では4月に募集、6月に議場にて委員の所信表明、9月に議場で新城市役所の部長クラスの方々に向けての中間発表、10月に地域交流会、11月に市長答申と進む。市長答申から3月までは答申した政策の内容をブラッシュアップする。
第四期では募集期間を1ヶ月早め、市長答申までの時間をより長くしている。そのスケジュールを紹介しよう。
5月:議場にて市長に諮問して所信表明、議長と副議長の選出
5月~6月:過去の若者議会や新城市の現状等をインプットしてチーム編成
7月~8月:中間発表に向けての準備を行い、市長と市役所職員幹部に政策発表
9月:ブラッシュアップと地域交流会
10月:地域の意見を取り入れてさらなるブラッシュアップ
11月:市長答申
若者議会が誕生するきっかけとなった若者
若者議会が発足する3年前の2012年に、イギリスへ行った新城在住の若者「竹下修平さん(以下竹下さん)」がいた。
竹下さんがイギリスへ向かった理由は、世界新城アライアンス会議である。世界新城アライアンス会議とは、世界で「新しい城」を意味する都市の人が集まる会議で、例えばイギリスのニューキャッスルなどが含まれる。
2年に一度の頻度で世界のどこかの新城市で開催されており、2016年のカナダのクラリントン市で開催された世界新城アライアンス会議に僕が参加したときの記事を紹介したい。
第一回目の新城市開催のときにはスイスのヌシャテル、ドイツのノイブルグ、イギリスのニューキャッスル、アメリカインディアナ州のニューキャッスル、アメリカペンシルバニア州のニューキャッスル、南アフリカのニューキャッスル、フランスのヌフシャトーが参加した。
ニューキャッスルが並んでいることから予想ができると思うが、和訳すると’新しい城’になる世界の都市の人々が日本に集まったのである。
よくよく聞いてみるとそれはかつて行われた「ふるさと創生一億円事業」の交付金が使われた企画だという。ふるさと創生事業というと、日本一長い滑り台を作ったり、金塊を購入したりといったニュースを思い出すが、新城市は国際交流や人材に投資するという意味でニューキャッスル会議を企画したのだ。
当時の新城市役所職員が世界の新城市を探し、コンタクトを取るために奮闘した。まったくコネのないところから営業の国際電話やメールを入れたという。すごすぎる。。。
話は戻るが、2012年のイギリスアボンタイン市で開催された世界新城アライアンス会議に竹下さんが参加した。
竹下さんを含む4名の新城市の若者はそこでショックを受けた。
自分たちが自分たちのまち新城について何も知らないこと、何も話せないこと。
また、世界各国の若者は日ごろからまちづくりに関心を持ち、市政に積極的に参加する姿勢や自国への高い愛郷心をもっていること。
ヨーロッパではユース会議という選挙によって選ばれた若者が政治に参加する仕組みがあること。
それらのショックを日本に持ち帰り、竹下さんらはユースの会を発足した。
後にそのユースの会の活動が新城市民の目に止まり、市民まちづくり集会の第二部を任されることとなる。
それを目にした当時の穂積亮次新城市長が若者が活躍する新城市にするという方針を立てたことにより、若者政策ワーキングという組織が発足した。
若者政策ワーキングとは?
若者政策ワーキングとは「若者にとりまく様々な問題を考え若者の力を活かすまちづくり政策を練り上げていく こと」を目的に結成された組織である。
メンバーは新城市に住む若者19名で、高校生2、大学生7、社会人1、地域おこし協力隊4であった。
2014年度の一年間を使い、高校生を含む若者が新城市の現状を把握し、他自治体の取り組みを学ぶ。主に外部団体との意見交換、市内のフィールドワーク、先進地視察などを実施。
福井県鯖江市のJK課を視察に行ったときの記事を紹介したい。
参加している大学生は当然のことながら意識もレベルも高く、うらやましいほどだ。そのような若者を活かす試みがうまくいき、実際に行政に影響を与えるようになれば相当おもしろいことになりそう。
新城市を「若者が活躍できるまち」にするために若者が考えて話し合った。主な成果として以下の4つが挙げられる。
・若者議会の検討・・・若者の意見を市政に反映させる仕組みづくり
・若者総合政策の作成・・・若者が活躍できるまちにするために必要なものは何かをまとめた冊子
・成人式でのPR・・・新城市の将来を担う若者のまちづくり参加の促し
・キックオフシンポジウムの開催・・・まちづくりできる喜び、可能性、使命感を分かち合う参加型シンポジウム
そして最終的に先に説明した新城市若者条例・新城市若者議会条例ができあがった。
最後に新城市のウェブサイトにある若者政策ワーキングニュースレターも紹介しておく。
若者議会ができあがるまでの歴史の話を終え、第一期からの具体的な活動について次から触れていく。
第一期若者議会の活動と実績
第一期の若者議会は2015年に募集が始まった。定員の20名を超える応募があり、20名に絞られて発足した。
半数が高校生だったことと、女性が男性の2倍いたことが特徴的だった。
第一回若者議会が議場にて開催され、各議員の所信表明が行われた。第一期の議長は「若者議会が誕生するきっかけとなった若者」で紹介した竹下修平さんとなった。
インプットとして井上貴至さんに来ていただき、政策の作り方を学んだ。6つのチームが1つずつの政策を作り、中間発表を行った。
ブラッシュアップが続き、メディアにも頻繁に取り上げられた。僕がブログ記事にしたのは一部でしかない。
2014年11月に若者議会で考えられた政策を市長に答申した。6つの政策の事業費は約1,000万円であった。
ポスターの出来が良いので良かったら下の関連記事を見て欲しい。
第二期若者議会の活動と実績
第一期が終わり、2015年度に第二期が始動。第一期の委員20名に加え、市外委員を5名募集することとなった。市内だけではなく市外の若者の声を新城市に取り入れようと試みであった。それは未だ続いている。
第二期のメンバー計25名が決まり、所信表明が行われた。関連記事でその動画も掲載した。
一期生の想いを引き継ぎながら、二期生が新たな政策を考えていった。ブログが開設されたことで広報PR力があがり、大手メディアで取り上げられることもさらに増えた。
第二期若者議会の事業費合計は約950万円であった。
第二期の画期的なことと言えば、愛知県新城市若者議会が第11回マニフェスト大賞”プレゼン大会最優秀賞””シチズンシップ推進賞最優秀賞”に選ばれたことだろう。
2514件の応募の第1位に選ばれる快挙である。
さらにプレゼン大会では第二期若者会議議長の村松里恵ちゃんが大賞を勝ち取っている。周りはみんな大人のなかで高校生が受賞したことが半端ない!
第三期若者議会の活動と実績
2017年度に第三期若者議会が発足した。360度カメラでその様子を撮影しているので良かったら見て欲しい。
若者議会3期議場! – Spherical Image – RICOH THETA
メディアの取材は相変わらずあり、若者議会の視察もかなり増えてきた。
第三期の事業の特徴として第一期と第二期からの引き継ぎ事業が多いことが挙げられ、第三期で若者議会の手を離れるように政策の出口を考えていた。
上の関連記事は中間発表の在り方について考えたもの。そして例年通り、無事市長答申が行われた。
第四期若者議会の活動
2018年は1ヶ月前倒しで第四期若者議会が始まった。
今年も僕はメンターとして関わっており、政策づくりのサポートをしている。今年はどうなっていくのか楽しみ。
若者議会と若者政策の本について
若者議会に関してより詳しく知りたい方は、「自治体若者政策・愛知県新城市の挑戦―どのように若者を集め、その力を引き出したのか (市民力ライブラリー)」という本が発売されている。
僕も少しだけ書いた部分があるし、興味がある方は良かったら手に取ってみて欲しい。
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若者議会の公式ウェブサイトやSNSアカウント
最後に若者議会の公式ウェブサイトとSNSアカウントの紹介。
・新城市若者議会ウェブサイト
・フェイスブックページ
・ツイッター
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