タンザニア旅行でマラリアの恐怖

肌を焦がす音が聞こえてくるような灼熱の太陽光が降り注ぐ中で、相変わらず自転車を漕ぎ続けていた。代わり映えのしない風景が気力を削ぐ。そんな中で気付いたのは、タンザニアは道の脇に続くわずか数百メートルの集落にもゲストハウスがあるということ。これは自転車乗りにとっては有難いことで、宿のある街をあらかじめ調べてそこまで走るということをしなくて済む。くそ暑い中でブッシュキャンプをやる気は起こらなかったし、治安に懸念もある。なによりシャワーを浴びてから横になりたい。

ザンジバル島を出発して4日目のこと。日が暮れるちょっと前に辿り着いたMbeweweという街で宿をたずねた。その小さな街にある宿は1つのようで、そこに案内してもらう。走ってきたダルエスサラームとモシを繋ぐ幹線道路から脇道に徒歩5分ほど入りこんだ先に、ゲストハウスがあった。

見るからにぼろいその宿の値切った末の値段は7000シリング(約350円)。価格に見合わないくらいに古かったが、次の街まで走る気はないので仕方がない。そこで泊まることにする。

自転車を部屋に入れてから気付いたのは、鍵がかからないということ。正確にいうと鍵はある。鍵をかける場所にごつい南京錠がはいっており、その南京錠の鍵がないという。それが邪魔で他の鍵を入れることが出来ず、鍵がかけられないのだ。

どうゆうことだと詰め寄るものの、「アグナマタータ」という答えしか返ってこない。スワヒリ語のアグナマタータとはNo problemの意ですなわち問題ないと。この宿はアットホームでセキュリティだから大丈夫だという。ただ、他の部屋の人は当たり前のように鍵をかけているわけで、、、

なるようになれ、と呆れつつ許容。疲れていたし。とにかく汗が不快だったのでシャワーを浴びようと宿を徘徊するもそれとおぼしきものが見つからない。宿の人に聞くと、バケツに水を入れてそこらへんで浴びろ、と。「アグナマタータ」ってね。それは宿側のセリフではないんだよ。

水バケツシャワーを浴び、夕食を食べに行く。鶏肉とトマトのスープとご飯を頂き、宿に戻った。物が盗まれていないことを願って入った部屋は真っ暗。電気がつかない。日中は電気がつかないけど夜はつくって言ったじゃん、と宿の人に抗議する。帰ってきた答えは「アグナマタータ」。何が問題ないのか分からないし、ここまで来ると最早マタータと言って差し支えないと思う。

さらに部屋に戻って気付いたのは、もわっとした空気。部屋に少しいるだけで汗をかく。空気を入れかえるために窓を開けると大量の蚊が入ってくる。それもマラリアの可能性を持った蚊が。蚊帳は穴だらけで、使うと体感温度がさらに上がる始末。思い返せば今までの安宿には扇風機があり、回し続けて寝ていた。電気すらない場所で扇風機が期待できるはずもない。

汗をかかないことは不可能。その汗に蚊が寄ってくるのか、どんどん刺される。かゆくて仕方がない。2つのコンボで寝られないのは勿論、マラリアの心配が頭をよぎる。今刺してきている蚊がマラリアを持っていたら、発症するのは日本から遊びに来てくれる友人と一緒にいる真っ最中。それだけは避けたいのだが、どうしようもない。

暑過ぎて寝られないときは、来ている服をびしょびしょにすれば気化熱ですずしくなって寝られるという情報を思い出した。服を着たまま水を浴び、再びベッドに横になってみる。確かに少しは涼しいけど、服が体に張り着いて不快。相変わらず蚊はぷんぷんと体の周りを飛んでいる。結局のところよく眠れないまま朝を迎えた。どんでもない夜だった。

翌日走り出すも、目がしゅぱしゅぱするし足が重い。今日はさっさと休もうとペダルを回す。そんな中、今日泊まる場所も昨日みたいなところしかなかったら、、、と考えたら、バスという一手が頭をよぎった。

バスを使うことを一度考え始めたら、そのための理由がどんどん浮かんでくる。
・昨日みたいな宿しか見つからなかった最悪。宿のために先へ先へと漕ぐ気力がない。
・かつてない交通マナーの悪さ。いつ事故にあって死んでもおかしくない感じが漂っている。事故っているトラックをよく見かけるし。死の恐怖は今まで走った国の中でワースト1位。
・今のペースで走り続けると友との合流のモシへ着くのがぎりぎり。出来れば事前にキリマンジャロやサファリのツアーを調べたいし、登る前に休憩に数日が欲しい。
・タンザニア人のGive me money攻撃にうんざり。子供から大人まで「金くれ」とばかり言ってくる。金がなければ物をくれ、と。どめどない。
・代わり映えのしない風景と修行としか思えない暑さ。そんな中で何度もパンク。

もういいか。心の方も納得の様子だったので、大人しくバスを使うこと。Mkataの街でバスを捕まえて、ようやく僕の心が「アグナマタータ」な感じになった。

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道中の新鮮なフルーツこそが最大の楽しみ。

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鉄板の組み合わせ。朝ごはんはこれで決まり。1000シリング(約50円)

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おばちゃんが作っている隣で食べる。

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バナナと肉の煮込み。肉はたぶんヤギ。味はまあまあといったところ。3000シリング(約150円)

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15時のおやつ休憩。

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ポテトと卵。1500シリング(約75円)

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16時以降は涼しくなって大分漕ぎやすい。

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子供たちが集まってきたぞ~。

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アフリカの子供は動きに躍動感があるよな。

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癒しのひととき。

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鶏肉のトマト煮がなかなか美味しかった。ご飯と合わせて4000シリング(約200円)。

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宿の様子。

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アグナマタータ宿。実際のところはマタータだらけ。

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幹線道路からこんな道を入ったところだった。

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眠気を引きずっての出発。

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マンガっていう街があった!!

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砂糖のふたを開けたらハチだらけ。紅茶を半分くらい飲んだところで一息着き、再びカップを手に取ると紅茶の中でハチが3匹死んでいた。ハエが多いのは勿論だけど、ハチも多かった。

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定番のポテトと卵、に肉。ヤギの肉は全然噛み切れない。顎が鍛えられそうだ。

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集落ではベッドを作っていることが多い。分解してバスで運んでいる。

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自転車をバスに積み込み、炎天下の中から解放された。ようやくアグナマタータである。







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管理人のたかです。1984年4月20日生まれ。不動産会社での開発業、自転車世界一周、地域おこし協力隊を経て、愛知県新城市の古民家で宿泊事業をはじめました。SNSでフォローしていただくと最新記事を読むことができます。よろしくお願いします。