ブタペストを散歩していた初日に、街で最も高く聳え立つ聖イシュトヴァーン大聖堂の前で足を止めた。中に入ろうとしてみると1枚のビラを配られた。そこにはオルガンコンサートが17時から開始と記載されている。時刻を確認すると16時40分。いざなわれるように約2000円のチケットを買った。普段だったらこの額の娯楽を買うのには幾らかの検討の時間があるものなのに。ブタペストの雰囲気に心を持っていかれた感じだった。
待つこと10分でコンサートが始まった。流れ始めた旋律にあっという間に心を奪われ、目を閉じ耳を傾けた。遥か昔の自分が見た景色が次々と目に浮かび消えていった。その中には幼少期に習っていたピアノを弾いている自分の姿もあった。なんで?と思ったけれど、その現象の理由を考えるより、音に身を任せてみたくなり、考えることを止めた。次第に無心になっていき、夢見心地で聞くうちに姿勢を正したくなり、ピンと背筋を伸ばした。そのとき、曲が変わった。
重量と密度を感じさせる低音の和音が天から落ちて来た。音が脳天から背筋を伝って全身が痺れた。衝撃。身体の内部を貫かれたような気分になり、恐怖と高揚感に包まれた。このような音を、ピアノを習っていたときに聞いていたら、何かが変わっていたのかもしれない。
貴重な体験をした気がする。
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