盲目のマッサージ師とベトナムコーヒー

「どこの出身だ?一緒に飯を食べよう!」

宿を決めて、その付近のレストランでオーダーをしようとしていたときのこと。話かけてきた男は女連れだった。一緒に卓を囲んで炒飯を注文した。

その男は英語が達者で、女の方はほとんど話せないようだった。話を聞いていくと、男は英語教師で女は生徒。どうりで英語が上手いはずである。彼が教えている女の子は18歳で、高校を卒業したらイギリスに3年間留学するという。

2ヶ月後の3月から単身イギリスに行くとのことだが、その英語力で大丈夫か、と不安になった。しかしよくよく考えてみると、当時16歳の僕がオーストラリアに留学したときはもっともっと英語が話せなかった。なんせ始めて学校に行ったときに「How are you?」が聞き取れなかったのだから。そのときの付き添いの人が、本当に、心の底から心配そうに、これから大丈夫?と聞いてくれた。今となっては懐かしい思い出である。きっと彼女もなんとか道を拓いていくのだろう。

ご飯を食べ終え、マッサージ屋に連れて行ってもらうことになった。ここで女の子はバイバイ。

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連れられた廃墟のようなビルにはマッサージと書かれた看板などなく、本当に大丈夫か如何わしい。そこで案内してくれた人は盲目の人だった。初めての盲目の人によるマッサージ。初めてのベトナムマッサージ。期待と不安が入り混じっていた。

ベッドに横になるとまずは頭から始まる。足から始まるタイマッサージとは全く違っていた。順番も、内容も。頭→足→腕→体、と進んでいった。ツボの位置を確認するように動く手は、的確な場所をかなり強い力でぐいぐい押していく。気持ち良いっていうよりは、効いてそうって感じ。マッサージを終えてベッドから立つと、身体が軽かった。すごい。

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1時間で40000ドン(約170円)は彼が出してくれてその日はお別れ。次の日の朝6時にホテルの前で待ち合わせ、朝飯を一緒に食べに行った。

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食後はコーヒー。ベトナムコーヒーの特徴は少量で濃厚。店員が持ってきた時点でコーヒーはまだ飲めず、濾されるのをしばらく待つ必要がある。その底にはコンデンスミルクがたっぷり入っており、お好みで混ぜる。勿論ブラックを頼むことも可能だ。アイスコーヒーの場合はそれを氷の入ったコップに移す。

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僕はホットコーヒーを頼んだのだが、コップが熱湯の中で温められ続けているのは細かい気配り。今までの飲んだ店はそんな気配りはなく、コーヒーが濾される間に冷めてしまっていた。一杯10000ドン(約45円)。ベトナムコーヒーは今まで飲んだコーヒーで一番美味い。ベトナムに来たら外せないものの1つである。

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コーヒーを飲んでいると彼の友人がやって来た。友人は美容師で、僕の伸びている髭を見て、うちの美容院で剃っていけ、と言う。お言葉に甘えて鬚を剃ってもらった。

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彼は教師の仕事へ、僕は次の町へ、とお互いの進む道を確認して別れた。良き出会いだった。







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管理人のたかです。1984年4月20日生まれ。不動産会社での開発業、自転車世界一周、地域おこし協力隊を経て、愛知県新城市の古民家で宿泊事業をはじめました。SNSでフォローしていただくと最新記事を読むことができます。よろしくお願いします。